ギリシャ神話の神々の家系図|カオスからオリュンポス十二神までの系譜を図解
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ゼウス・ヘラ・ポセイドンといった名前は聞き覚えがあっても、誰が誰の子で、誰が兄弟なのかとなると、とたんに怪しくなります。原因ははっきりしていて、ギリシャ神話の系譜は一冊の物語として順番に語られるものではなく、詩人ヘシオドスの『神統記』をはじめ複数の資料に断片的に記されているからです。しかも神ごとに複数の出生譚が伝わり、時代によって系譜そのものが書き換えられてもいます。ここでは『神統記』を軸に、原初の神カオスからオリュンポス十二神まで三世代の系譜を一枚の図に整理します。
目次
ギリシャ神話の神々の家系図|カオスからオリュンポス十二神まで
まず、『神統記』が伝える系譜の全体像を一枚の系図にしました。
大きな流れは、次の三段に分けて読むと迷いません。
- 原初神の登場 — 最初にカオス(混沌)が生まれます。ガイア(大地)はカオスの子ではなく、カオスとは別に原初から存在した神で、相手なしにウラノス(天空)を生み、のちに自らの子であるウラノスを配偶者として迎えます。
- ティタン神族の誕生 — ガイアとウラノスのあいだに、クロノス・レアを含む十二柱のティタン神族が生まれます。同じ場面で、ウラノスの身体からアフロディーテも生まれます。
- オリュンポス十二神の誕生 — クロノスとレアの子であるゼウスが父を打倒して神々の王となり、複数の女神とのあいだにオリュンポス十二神の多くをもうけます。
以下では、各段の中身と、伝えが分かれる箇所を順に見ていきます。
ティタン神族の家系図|ウラノスとガイアから生まれた十二柱
ギリシャ神話の家系図で最初につまずくのが、この原初の場面です。ガイアは相手なしにウラノスを生み、そのウラノスを配偶者として迎えてティタン神族を生みます。親でありのちに配偶者でもあるという関係は、人の家系図の感覚では捉えにくい部分です。
『神統記』では、ガイアとウラノスのあいだに十二柱のティタン神族が生まれたとされます。男女六柱ずつで、代表格がクロノスとレアです。
| 区分 | 神名 | 系図上の位置 |
|---|---|---|
| 男神六柱 | オケアノス・コイオス・クリオス・ヒュペリオン・イアペトス・クロノス | 末子クロノスが父ウラノスを打倒し、王位を継ぐ |
| 女神六柱 | テイア・レア・テミス・ムネモシュネ・ポイベ・テテュス | レアがクロノスの妻となり、オリュンポス十二神の母となる |
クロノスは、母ガイアに渡された鎌で父ウラノスを傷つけ、王位を奪います。このとき飛び散ったウラノスの血や、切り離された身体が海に落ちてできた泡から、アフロディーテをはじめとする神々が生まれたと『神統記』は伝えます(詳しくは後述します)。
ゼウスの家系図|クロノスとレアの子とオリュンポス十二神の誕生
クロノスとレアのあいだには、ヘスティア・デメテル・ヘラ・ハデス・ポセイドン・ゼウスの六柱が生まれます。ここにも、ギリシャ神話らしい波乱があります。
| 生まれた順 | 神名 | その後の役割 |
|---|---|---|
| 一子〜五子 | ヘスティア・デメテル・ヘラ・ハデス・ポセイドン | クロノスに飲み込まれる |
| 六子 | ゼウス | レアの機転でクレタ島へ逃がされ、育てられる |
クロノスは「自分の子に王位を奪われる」という予言を恐れ、生まれた子を次々に飲み込みました。末子のゼウスが生まれると、レアは石を産着にくるんでクロノスに差し出し、本物のゼウスをクレタ島へ隠して育てます。成長したゼウスは、祖母ガイアの助言を受けた策略でクロノスを苦しめ、飲み込まれていた五柱の兄姉を吐き出させました。生まれた順では末子のゼウスが、系図の上では兄姉たちの「解放者」という位置づけになるのが、この神話の面白いところです。
このあと、ゼウスを中心とするオリュンポスの神々と、クロノスを中心とするティタン神族のあいだで十年にわたる戦争(ティタノマキア)が起こり、ゼウスたちが勝利して神々の王位が交代します。
オリュンポス十二神の家系図|ゼウスの子とメティス・レト・マイア・セメレ

王位についたゼウスは、複数の女神・人間の女性とのあいだにオリュンポス十二神の多くをもうけます。系図では、ゼウスから何本もの配偶者線が枝分かれする形になります。
| 相手 | 生まれた神 | ギリシャ名 | 補足 |
|---|---|---|---|
| ヘラ(妻) | 軍神 | アレス | ヘラはこのほかヘファイストスを単独で生んだとする伝えもある |
| メティス | 知恵の女神 | アテナ | ゼウスに飲み込まれたメティスの体内で育ち、ゼウスの頭から誕生 |
| レト | 音楽・予言の神/狩猟と月の女神 | アポロン・アルテミス | 双子として生まれる。太陽神・月の女神とする同一視は後代に広まった伝承 |
| マイア | 伝令の神 | ヘルメス | ティタン神族アトラスの娘マイアとの子 |
| セメレ(人間) | 酒と豊穣の神 | ディオニュソス | 母は人間の王女。一般的な十二神の顔ぶれでは唯一、人間を母に持つ |
アテナの誕生には前段があります。ゼウスは、最初の妻メティスが「娘のあとに、ゼウスの王位を奪う息子を生む」という予言を恐れ、身ごもったメティスを飲み込んでしまいます。やがて頭痛に苦しんだゼウスの頭から、武装したアテナが誕生した——これが『神統記』が伝えるアテナ誕生の場面です(ヘファイストスが斧でゼウスの頭を割ったとする細部は、のちの伝承で加わったものです)。母の体内で育ち、父から生まれるという、系図の線だけでは表しきれない誕生譚を持つ神です。
アフロディーテの誕生をめぐる二つの説|『神統記』とホメロスの伝え
美と愛の女神アフロディーテは、ギリシャ神話の中でもとくに誕生譚が二つに割れる神です。
| 伝え | 誕生の経緯 |
|---|---|
| ヘシオドス『神統記』 | クロノスに切り落とされたウラノスの身体が海に落ち、そのまわりに立った泡(アプロス)から生まれた。両親を持たないが、系譜上はウラノスの子であり、ティタン神族と同じ世代にあたる |
| ホメロス『イリアス』 | ゼウスと、大洋神オケアノスとテティスの娘(オケアニス)のひとりディオネのあいだに生まれた娘とされる |
オリュンポス十二神は誰か|ハデスが入らない理由とヘスティアとの入れ替わり
「オリュンポス十二神」という呼び方はよく使われますが、実は誰を数えるかが資料によって少し違います。
| ギリシャ名 | ローマ名 | 備考 |
|---|---|---|
| ゼウス | ユピテル(ジュピター) | 神々の王 |
| ヘラ | ユノ | ゼウスの妻 |
| ポセイドン | ネプトゥヌス | 海の神。十二神に数える |
| デメテル | ケレス | 農耕の女神 |
| アテナ | ミネルウァ | 知恵と戦の女神 |
| アポロン | アポロ | 太陽・音楽の神(ラテン語でも同じ名) |
| アルテミス | ディアナ | 狩猟と月の女神 |
| アレス | マルス | 軍神 |
| アフロディーテ | ウェヌス(ヴィーナス) | 美と愛の女神 |
| ヘファイストス | ウゥルカヌス(ウルカヌス) | 鍛冶の神 |
| ヘルメス | メルクリウス | 伝令の神 |
| ヘスティア/ディオニュソス | ウェスタ/バックス | 十二番目の座を交代したとされる |
固定の十一柱に対し、十二番目の席には二通りの伝えがあります。炉の女神ヘスティアを数える伝えと、酒神ディオニュソスを数える伝えが並び立ち、パルテノン神殿の東フリーズのようにディオニュソスを十二神に含める例もあります。ヘスティアがディオニュソスに席を譲ったという説明が広く語られますが、地域や時代による伝承の違いとして捉えるのが実際に近いところです。
もう一つ間違えやすいのが、冥界の王ハデスです。ハデスはクロノスとレアの子で、ゼウスの兄にあたる有力な神ですが、慣例としてオリュンポス十二神には数えません。オリュンポス山ではなく冥界を治める神とされるためです。系図では兄弟として並んで描かれるだけに、この点は混同しやすいので注意してください。
ギリシャ神話の家系図の作り方|関係線でローマ神話の別名も整理する
ギリシャ神話の系図を自分で描くときも、使う関係線は人の家系図と変わりません。
| 関係 | 線の種類 | ギリシャ神話の系図での使いどころ |
|---|---|---|
| 親子 | 実線 | クロノスからゼウス、ゼウスからアテナなど |
| 配偶者 | 二重線 | ウラノスとガイア、クロノスとレア、ゼウスと複数の女神など |
ゼウスのようにひとりの神に何人もの配偶者・恋人が伝わる場合、系図では配偶者線が扇状に何本も枝分かれします。人物が増えるほど手描きでは配置がずれていきますが、本サイトの家系図エディタなら人物を追加しながら配偶者線・親子線を選んで引けるので、ゼウスの系譜のように枝分かれの多い神話でも整理しやすくなります。上の系図はそのまま読み込んで編集できます。登録は不要です。伝承ごとの異説を書き添えたいときは、注記欄に「『神統記』による」のように出典を添えると、家系図の書き方で紹介している基本の記法とあわせて読みやすい系図になります。
ギリシャ神話の神々は、のちのローマ神話でも名前と役割の多くが引き継がれました。ただし呼び名が対応するからといって同じ神とは限らず、性格や物語には違いも残ります(詳しくは後述のFAQで扱います)。
ギリシャ神話の家系図でつまずきやすい点|ハデス・アフロディーテ・別名の扱い
- ハデスをオリュンポス十二神に含めてしまう — ハデスはクロノスとレアの子でゼウスの兄だが、冥界を治める神として十二神には数えない
- ヘスティアとディオニュソスを両方十二神に入れてしまう — 十二番目の座は入れ替わったとする伝えのため、系図に描く際はどちらの説に拠ったか注記する
- アフロディーテをゼウスの子として描いてしまう — 『神統記』ではウラノスの身体から生まれたとされ、ゼウスの子とするのはホメロス系の伝え
- ヘファイストスにゼウスとの親子線を引いてしまう — 『神統記』ではヘラが単独で生んだとされる
- ギリシャ名とローマ名を別の神として扱ってしまう — ゼウスとユピテル、アテナとミネルウァのように、同じ神の呼び名の違いにすぎない
日本神話にも、伊邪那岐命ひとりから三貴子が生まれたとする単独の化生や、記紀で系譜が食い違う箇所があります。あわせて読むと、神話の系図に共通する「異説をどう扱うか」という視点が見えてきます。天照大御神の家系図でくわしく解説しています。
よくある質問
オリュンポス十二神とは誰ですか?
ハデスはオリュンポス十二神に含まれますか?
ゼウスの子どもは誰ですか?
アフロディーテの親は誰ですか?
ギリシャ神話とローマ神話の神々はどう対応しますか?
AUTHOR
家系図マニア
祖父の連絡先を探して戸籍をたどった経験から、家系図を作りはじめました。家族のつながりも、歴史上の一族や物語の関係図も、自分の手でたどれる入口にしたいと考えて個人で運営しています。行政書士・司法書士などの資格は持たないため、法的な判断が必要な場合は専門家への相談をおすすめしています。